肺がん
山﨑成夫 恵佑会札幌病院呼吸器外科部長
原因と症状は?
原因と症状は?
肺がんは、肺の細胞の中にある遺伝子に異常がおきることで生じます。原因はさまざまですが、代表的なものが喫煙です。喫煙者の肺がんリスクは、非喫煙者の20倍以上とされています。受動喫煙が原因になることもあります。他には大気汚染、アスベスト、遺伝的な要因なども知られています。
症状としては、治りにくいせき、血痰、息切れ、胸の痛み、呼吸時のぜーぜー音、声のかれなどがあります。しかしこれらは、必ずしも肺がんに特有のものではありません。また早期では症状が出にくく、たとえ出ても「かぜやタバコのせい」と思って見過ごしてしまう方も多いようです。先にあげた症状が長く続く場合は、医療機関の受診をお勧めします。喫煙歴のある40歳以上の方は特に注意が必要です。
検診・検査は?
肺がんの予防には禁煙が最も大切ですが、定期的に検診を受けて早期発見を心がけることも重要です。検診方法として一般的に行われているのは「胸部X線検査」です。50歳以上で、喫煙指数(1日に吸う本数×喫煙年数)が600以上の方は、痰の中にがんなどの病的な成分が含まれるかどうかを調べる「喀痰細胞診」も合わせて行います。
胸部X線検査で異常が認められると、胸部CT検査や、リンパ節の腫れや胸水の有無などの確認を行います。その結果、肺がんの疑いがあれば、PET検査(写真)、気管支鏡検査、胸腔鏡検査、生検などにより肺がんの確定診断、病期(進行の度合い)診断へ至ります。早期診断のため、これらの検査が同時進行で進められる場合もあります。
CT(コンピュータ断層撮影)の3−D画像。緑色の部分ががん細胞
PET(陽電子放射断層撮影法)。がん細胞に集まる薬剤(FDG)を注射し、放射線を利用して画像化。リンパ節転移や遠隔転移の診断に有用
肺がんの種類は?
肺がんの種類は?
肺がんは、小細胞がんと非小細胞がんの2つに大きく分けられ、治療方法が異なります。
小細胞がんは、肺がんの約15〜20パーセントを占め、増殖が速く、脳・リンパ節・肝臓・副腎・骨などに転移しやすく、悪性度の高いがんです。しかし、非小細胞がんよりも抗がん剤や放射線治療の効果が得られやすいとされています。
非小細胞がんは、小細胞がん以外の肺がんの総称で、肺がんの約80〜85パーセントを占めています。主に腺がん、扁平上皮がん、大細胞がんがあり、最近では非小細胞がんの遺伝子の変異を調べてさらに分類し、治療方針を考えるようになっています。小細胞がんも非小細胞がんも病期を大まかに分類すると、Ⅰ期(がんが肺にとどまる)、Ⅱ期(肺の近くのリンパ節まで転移)、Ⅲ期(遠くのリンパ節まで転移)、Ⅳ期(脳、骨、肝臓など、他の臓器に転移)に分かれます。
治療法は?
治療法は?
肺がんの治療法は、外科治療(手術)、薬物療法(抗がん剤治療)、放射線治療があります。
手術の対象となるのは、小細胞がんの場合はⅠ期のみ、非小細胞がんはⅠ期からⅡ期(時にⅢ期の初期)までです。
薬物治療は、抗がん剤を点滴静脈注射、または内服で行い、手術や放射線治療と併用される場合もあります。
放射線治療は、高エネルギーのX線を体の外から照射します。根治を目的とする根治的胸部放射線治療と、転移によって起こる症状の緩和を目的とする緩和的放射線治療があります。
恵佑会ならではの取り組みは?
恵佑会ならではの取り組みは?
恵佑会では、肺がんの患者さんの診断から治療、終末期までを同じ科で一貫して行っています。担当医が途中で代わることのない一担当医制を取ることで、患者さんにもご家族にも安心して治療を受けていただけるよう力を尽くしています。
治療方法においては、放射線治療のレベルの高さがあげられます。放射線治療の副作用の放射線肺炎は、多くの患者さんは特別な症状もなく数カ月で治まりますが、高齢者の方や、肺に広く放射した場合は、症状が重くなる危険もあります。これを避けるためには、患部に的を絞って照射する高い技術が求められます。恵佑会ではこの部門においても確かな技術力を備えています。
非小細胞がんに対する薬物治療では昨今、新薬の研究が進んでいます。増殖や転移などにかかわるがん細胞の分子を標的とした「分子標的薬」や、がんを攻撃する免疫細胞への防御壁を壊す「免疫チェックポイント阻害薬」などです。恵佑会では患者さんのがんの種類や病期、症状などに応じてこれらの新薬を導入することで治療の可能性を広げています。
山﨑成夫 やまざき しげお
1993年、北海道大学医学部卒業。日本禁煙学会禁煙専門指導者、日本外科学会外科専門医、日本呼吸器内視鏡学会気管支鏡専門医・指導医、日本がん治療認定医機構がん治療認定医。